3D表現を組み込んだWebサイトを開発するサービス「PopupWeb3D」が注目されています。サービスを提供しているのは、2020年に設立された株式会社VLEAP。WEBサイトのデザイン・3Dモデルの開発からリリース・コンテンツの保守管理などをさまざまな形で提供しています。
今回は同社の取締役である、新保 正悟さんに「そもそもなぜメタバースの世界に興味を持ったのか?」「Web3Dや今後のビジョン」など、バックグラウンドや素顔、リアルな本音に迫っていきます!
目次
海外での差別経験が起業の原点
起業しようと思ったのは、両親の仕事の影響で子ども時代に「フランス」「ロシア」「南アフリカ」を渡り住んで、世界の在り方に違和感を覚えたからです。
中でも南アフリカは差別が激しい国で、僕自身も黄色人種といった「色」で差別を受けました。中身が同じでも、肌の色や見た目ががちょっと違うだけで差別されちゃうんです。子どもながらにすごい理不尽だなと思っていました。
日本に帰ってきてからは、そういったことはあまり気にせず生活していました。中学・高校、そんなに良い経験があったかって言うとそうでもないですが…。とは言え、ゲーム友達ができたり、アニメとかにも触れたりして、普通に楽しく過ごしていました。
でも大学3年生になってからは、起業や経営の授業にすごく興味を持ち始めて…。早稲田って「経営者を育てる」「起業家を育てる」みたいな授業が結構多いんですよね。
その中でいくつか授業を取っているうちに「WASEDA-EDGEのギャップファンドプロジェクト」という起業を志す学生をファイナンスだけでなく、専門家の視点から支援してくれるプログラムがあることを知り、参加したところ採択頂きました。その時に、この機を逃すと他にタイミングがないなと思ったので、大学3年の後半くらいからずっと起業活動を続けていました。4年生の2月に法人登記をして、進み始めたっていったところがあります。起業した背景は、早稲田の後押しがすごく大きかったですね。
その時に偶然、秋葉原にあるビックカメラでVRを体験して「なんなんだこれ?!見たことない。今までにない世界がこんな小ちゃいデバイスの向こう側にあるぞ!」、って感動したのが始まりです。
そこから大学でメタベースの研究もしました。そのときに、世界最大のメタバースサービス「VRChat」を体験。そこで遊んでる人たちがアバターになっていて、見た目がもう全然違うんですよ。すごく楽しそうにみんなが話している・暮らしているのを見て「これは差別がない世界を作れる」、って思ったのがVRやメタバースを選択した理由かなと…。当時からそう思っていたと言うよりは、後々思考を整理してみるとそうだったんだなって分かった、そんな感じです。
海外と国内の差別の違い
1つは、「文化の違い」。
海外は、自分を積極的に開示していく文化だと思うんですよね。一方で日本は、みんなと同じであまり自分を開示しない。「自分を開示する=自慢」のように見えてしまうパターンが多いなと思っています。実際に僕も日本に帰ってきたときに、フランス・ロシア・南アフリカでやっていたように「自分はこういう人間です」、って言うのを伝えたんですよね。でもそれが自慢に聞こえたらしく、いじめられた経験がありました。
もう1つは、「同調圧力」。
日本は、集団の調和を乱さないことが美徳とされていると思います。そこに僕が馴染めなかったのもあるのかなと思いますね。
違っていることが当たり前なメタバースの世界に魅了される
メタバースは、入ってくる人たちが年齢・出身地・職業・性別もバラバラだし分からない。違っていることが当たり前の文化ならそもそも同調圧力って起きないんですよ。そう言った空間を用意することが大事なのかなとはすごく感じていますね。
必要な技術は実践から習得
VRやWeb3Dに関しては、扱うプログラミングの領域が結構違ってて。僕自身はプログラマーとは言ってますが、3Dモデルを作る方に寄ってる感じです。副代表は、Webやシステムの方をやってくれています。
戦場にいきなりほっぽり出されて、戦闘能力を身につけていくサイヤ人みたいなことをずっとやってた感覚ですね(笑)
早稲田でのプロジェクトが事業のきっかけ
1つが「起業の技術」と言う授業。早稲田の中でビジネスコンテストを勝ち抜いていくと、ある会社さんの事業部としてチームを結成できるという内容です。そしてもう1つが「WASEDA-EDGEギャップファンドプロジェクト」というものです。
元々は、VLEAPの核となったチームと僕自身はライバルだった関係性。ピッチで僕のチームが負けて授業が終わりと同時に解散したんですが、ライバルチームの代表の人が誘ってくれてVLEAPに入った感じなんです。
VRの会議室作りから受託案件へとプロダクトの変遷
ただ、VRの会議室ってすごく難しいというか…。既にもうMetaがVR会議室をやっているんですよね。日本国内でも大きい会社がやっていたりしてて「僕らが今参入すべきではないよね」、と言う結論に至りました。後は、そもそも投資に向いていない案件だなって感じたんです。
10年で結果を出して自分たちに十分な利益をもたらせられないと思ったんで、今の段階で投資を受けるべきではないと思って辞めたのが僕らの判断ですね。
自社としてもすごく良い経験でしたし、メタバースがどれだけの可能性を秘めているのかを検証できたなって感じています。
NTTドコモさんに加えて、JTBさんや道頓堀の地元の商店会さんも関わってくれたんですよ。自社だけじゃできなかった取り組みができたので、すごく大きかったなって思います。
大手と組んだことで事業が広がった
メタバースを使っているユーザーさんがいるのは、僕自身も研究して分かっていますし未来もすごく感じます。ただ、これを一般ユーザーまで浸透させるのは相当厳しいなと思いましたね…。なんでかって言うと、メタバースに来る理由が世間的にまだ薄いと感じているからです。
そもそも3Dモデルを使っている人が少ない。あるとしても、ゲームの中だけみたいな…。建築やエンターテイメント業界など、日常生活の中にも3Dモデルが入り込んではきていますが、まだまだ進んでいないなと思っています。
なので僕が今思っていることとしては、まずは3Dモデルを普及させていった方が最終的なメタバースへの道には近いんじゃないかなと…。こういう背景もあって、今はWeb3Dに関わっています。
受託業務のメインはWeb3D
後は、複雑な機械を画像や動画で見せるのが難しいから、Web上で3Dモデル的にお見せしたいっていうお客様も多いです。
Web3Dの可能性
なので細部のクオリティーを保ちつつ、軽量の3Dモデルを作れるかどうかってところが結構ネックになってますね。バッグや服の会社様から、質感を求められることが多いなって言うのはすごく感じています。
例えば、バッグだったら革感や縫い目とかを鮮明に表現しつつも、「これをいかに軽量するか」に関しては技術のせめぎ合いになってきます。
事業の変遷について
モデリング開発の技術について
弊社でモデリングの仕事を依頼している女性は小さなお子さんがいらっしゃるので、発熱など何かトラブルがあった時に僕の方で巻き取れるようなスキームを作っています。
基本的には納期に余裕があるように指示して、「何かあったときは僕の方で巻き取りますよ」って言うのをずっとやってますね。
会社の今後について
VLEAPのミッションが「拡張された情報で五感を埋め尽くす」なんですよね。この「拡張された情報」って言うのは、今は文字・画像・動画です。次に3Dモデルが来たときに、自分の目や耳以外にも全身が情報で埋め尽くされるような立体的な世界が確実に来るなと思っています。
この埋め尽くされた状態がまさにメタバースですね。将来メタバースが来たときに、3Dモデルを作る・制御する技術って絶対勝つと思うんです。そうなった時に向けて、僕らは3Dモデルを作る技術・扱う技術を受託を通して蓄積していき、ある程度したらプロダクトとして出したいなと思っています。
ECショップでの活用
後は、 AIイラスト生成の活用です。お客様にVRやメタバースの案件をやっているのですが、そのメタバース空間を作るときに、Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)を使って提案するのを結構やってるんですよね。で、これがお客様に「分かりやすいね」、って好評で。しかも僕らの作業時間としても低いんです。
こういったのも上手く使って環境さえ整えてしまえば、モデリングの生成もかなり楽になるなと…。それこそ、スキマ時間で何かできる仕事というのも増えるかも知れないですよね。
AIをデザインや空間の表現に
それでよければ、そこを再現するために実際に3Dの空間を作っていく作業になると、手戻りも少なく、イメージのすり合わせもしやすいっていうところですね。
3Dモデルもメタバースもそうなんですけど、ここが簡略化できるのはめちゃめちゃ強みだなと思います。
(取材:栗林和矢 執筆・編集:asuka)
※記事中の画像は全て新保さんからご提供いただいております。