【再登校率90%超】直接子どもと会わないのに平均17日間で再登校!スダチの不登校解決プログラムとは

文部科学省が10月4日に小中学生の不登校人数が29万9048人と過去最多*になったことを発表しました。

同時に「子どもが不登校になってしまった」「不登校の原因が分からなくてどう接したらいいか困っている」など子育てに関する悩みを抱える保護者も増加しています。

そんな中、子どもの不登校を平均17日で解決する支援サービス「不登校解決プログラム」のスダチが注目されています。

サービスを提供しているのは、2019年に設立された株式会社スダチ。子どもの不登校を、発達心理学や脳科学に基づいたアプローチ方法で解決しています。驚くべきところは、再登校まで平均17日、再登校率90.6%の実績。

「なぜ、短期間で不登校が解決できるのか?」「子どもを持つお父さん・お母さんに支持された理由はどんなところにあるのか?」、今回は同社の代表取締役である小川涼太郎さんにお話を伺います。

教育の大切さに気付き起業を決意

ーー大学卒業から今のサービスを展開するまでのご経歴を教えてください。

小川さん:新卒でアビームコンサルティングに入社後、人事のコンサルティングを担当しました。仕事をしていく中で「職場環境を整えれば世の中も良くなるはずだ」、と思って走り続けていたのですが、3年目を迎えたときに「自分の手だけで変えられるものには限界がある」みたいな感覚が生まれました。

そこから「自分って本当は何がやりたいんだろう」、と考えていたときに教育が一番大事だなと思いました。職場環境をどれだけ整えたとしても、楽しそうに働く人もいればうつ病になってしまう人もいる。

結局は、その人が生まれてきてからこれまでに受けてきた教育とか在り方、思想、考え方みたいなところが重要なんだと気付きました。そのときに、教育に軸を絞ってやり切ろうと決めたんです。

そこから会社員をしながら起業準備をして、2019年に通信制の学校を作りました。

幼少期の体験が大人になってから影響を与えているのでは?と考え、学校を立ち上げる

ーーいきなり学校ってなるとすごいスケールが大きいなと思ったのですが、今のスダチさんの形になるまでどのような試行錯誤があったのでしょうか?

小川さん:学校自体を立ち上げたのは2020年4月なのですが、それまでに不登校のボランティアもやっていたんです。

高校1年生の男の子(小学5年生から不登校)の家に、「メンタルフレンド」という形でボランティアに行っていました。一緒に遊んだり話をしながら子どもたちの心の支えになるという活動です。何回か家まで行って遊んでいたのですが、最終的にはもう会いたくないと言われてしまい…。理由は本人じゃないので本当のところは分からないのですが、当時すごいショックで…。

難しいなと思いながら、メンタルフレンドのボランティアをしているメンバー10人ぐらいで集まって話をしました。そのときに「結局何年も支援してるけど、学校に戻れたって人いないよね」、って話になって。その時に、本当にこのやり方でいいのか?もっと別の方法があるのではないか?と思い、他のやり方も探すようになりました。

そんな時、たまたま不登校を3週間で解決してる人に出会ったんです。私はその人から「子どもに会わない」「スマホやゲームは制限しないと難しい」「子どもに対してダメなことはダメと言わないといけない」、など不登校を解決するための根本的な考えを教わりました。

これなら不登校を解決できるかもしれないと思って動き出したのが2020年4月です。その時に、ボランティア活動を辞め、不登校の事業と学校を同時期に立ち上げました。

初めは、不登校を解決できるなんて無理だと思っていた

ーーお話を聞いていると、3週間で不登校を解決している人との出会いがかなり衝撃だったように思うのですが、たまたま活動してたら出会ったのでしょうか?

小川さん:そうですね、本当たまたまですね。こればっかりは運でしかないと思います。

ーー3週間で不登校を解決している方と出会ってから、すぐに小川さんの中でその人から教えてもらおうってなったのですか?

小川さん:当時は「そもそも不登校を解決できるなんてありえないでしょ。そんなこと本当にできるの?」と半信半疑でした。でも、実際に結果がでていると聞いていたので、ちょっと話を聞いてみるかみたいな感覚ではありましたね。自分でも色々と勉強しつつ、その方のノウハウや仕組みみたいなものを学んでいきました。

不登校領域に踏み込めたきっかけは、解決策が明確に見えたから

ーー小川さんが不登校領域の事業に踏み込めたきっかけはなんですか?

小川さん:「メンタルフレンド」として不登校のボランティアを経験した中で、子どもや親からの一次情報に触れていたことです。当時、メディアを立ち上げて不登校の記事を書いたりもしていたのですが、ここの領域をやっていく中で「解決策、本当にねぇな…。」ってめっちゃ思ってました。

不登校を解決できる人は実際にほぼいなくて、その中で解決できてる方法があるんだったらそれは100%ユーザーが求めているし、絶対に世の中のためになるって確信がありました。なので、解決策が見えたとき、参入する迷いは一切ありませんでした。

「3週間で不登校解決プログラム」を展開

ーー3週間で不登校を解決するプログラムについて、サービスの概要や具体的にどんな形で進められているのか教えてください。

小川さん:私たちは、子どもに直接会わずに親御さんとのやり取りのみが特徴です。まず初めに何をやるかと言うと、デジタル機器の制限。ここの部分を徹底します。一般的な不登校支援では「ゲームなど子どもが好きなことは制限なくやらせましょう」、という考えがあります。ですが、そのような支援の仕方で不登校が解決されたという成功事例はほとんどありません。

次に、正しい親子関係の構築します。不登校で悩んでいるご家庭の話しを聞いていると、親子関係が逆転しているケースが非常に多いです。あくまで親子関係の場合は、親が上に立って子どもが下。上司部下の関係と同じイメージですね。もしこの関係性が構築できていないと指示が上手く行き届かず、権限を子どもに渡したところで上手く使いこなせない悪循環が生まれます。親が上に立ってないと、褒めたり叱ったりしても何も子どもに伝わらなくなってしまいます。

最後に、生活習慣の改善。生活リズムが乱れている子どもが多いので、無理のない範囲で少しずつ規則正しい生活に戻していきます。朝日を浴びたり、決まった時間に食事を取ってもらったりして、改善できるようにサポートしています。

言葉を履き違えて、親子関係が逆転しているケースが多い

ーー親子関係が逆転していることが多いとお話されていましたが、一般的にどんな時に覆ってしまうものなのでしょうか?

小川さん:子育て本や不登校に関する本、カウンセラーから言われるほとんどが「見守りましょう」「待ちましょう」「子どもの話を聞きましょう」「寄り添いましょう」「共感しましょう」、なんです。

例えば、子どもが「学校は楽しくないから家でゲームしていたい」、って言ったら「じゃあゲームをして家で好きなことをやっておこうか」、ってなる。そうなると、どんどん子どもがゲームをしていきますよね。あとは、「美味しいもの作れ」とか、「欲しいもの買え」とか…。こうやって親が全部子どもの話を聞いて尊重していたら従うしかできないじゃないですか。そうなると、どんどん親子関係が逆転していきます。

ーー親が受動的になってしまうと、関係が逆転してしまうケースが多いということですね。

小川さん:そうです。今って「否定してはいけない」、って言葉もよく聞きますよね。実はこれも履き違えてるケースが多いです。「学校へ行かずにゲームをしていたい」、ってことも否定できないわけじゃないですか。そうすると、子どもはどんどん自分のやりたいこと、ただただ好きなことだけを主張し続けてしまいます。

子どものわがままを受け入れることと、子どもの意見を尊重することは似て非なるものです。

ーーなるほど。結果として子どもが権利ばかりを主張して好き放題できる。自分の気に食わないものは周りが悪い、環境が悪いみたいな…。あまり良くない未来が想像できてしまいます…。

小川さん:ただ、線引きが難しいですよね。でも、そこの線引きがうまくできないと関係が崩壊してしまいます。言葉をちゃんと咀嚼して子育てに生かせる人がどれぐらいいるかっていうと、やっぱりなかなか難しいのが現状だと思います。

不登校の子ほど、何にもやることがない時間を作るのが大事

ーー親子関係が逆転している中で、スマホやゲームなどのデジタル機器の制限はなかなかハードルが高いなと感じたのですが、具体的にどういったサポートをされているのでしょうか?

小川さん:まさにここが一番肝ですね。どちらかと言うと覚悟や気持ちの問題なので、なぜそうしないといけないのかを理論的に全て親御さんへ説明して重要性を理解していただいています。大事なのは、子どもが何か暴言を吐いたり暴れたりした時に毅然とした態度で接してもらうこと。もしここで、ゲームとかを返してしまったら「暴れれば親は許してくれる」、と間違った認識をしてしまうので、それだけは絶対にやめてくださいと。ここは、親子でしっかりと向き合ってもらいます。

ーーデジタル機器を制限すると、生活の多くをゲームに注いでいた子どもの時間が浮くと思います。その浮いた時間は、親子の会話の時間で埋めていくイメージですか?

小川さん:おっしゃる通りです。親子での会話もそうですし、何もやることがない時間を作るのも大事です。人ってやることがないと考えるんですよ。「自分ってこのままでいいのかな」「学校行ってないけど、社会にこのまま出ていけるのかな」、とか。こういったことを考える時間に当ててもらうのが大切だと考えます。ゲームしていると現実逃避できるから、こういう時間って一切取れないんですよね。

ーー暇に耐えられなくなった結果、その出口が学校になっていくメカニズムでしょうか?

小川さん:まさにその通りです。デジタル機器を制限して暇になった子どもが家でずっと寝てるといった場合には、次に生活習慣の改善をアプローチしていきます。朝起きる時間を決めて、朝ごはんをしっかり食べて内臓から起こす。体内時計のリズムを戻していくといったイメージです。

不登校になってしまう原因の多くは「スマホゲーム」

ーー素朴な疑問ですが、どんなきっかけで不登校になってしまう子が多いのですか?

小川さん:圧倒的にスマホゲームが多いですね。学校よりも家が居心地良くなっているケースが多い印象を持っています。20年前だと「家にいてもやることないし学校行くか」、ってなってたと思うのですが、今って家でいくらでもゲームやYouTubeを見て1日過ごせる環境がある。「家にいる方が楽しい!」っていうのが純粋な理由だと考えています。

それに加えて、親子関係が逆転していて、それを制御できる親もほとんどいない。先ほどお伝えしたよいに、今の世の中の風潮、「好きなことやらせよう」、「否定しないようにしよう」とか。その流れも少なからずありますね…。

ーー確かに大人でさえもスマホ触ってたら何時間も経ってた、みたいなことありますもんね。

小川さん:そうですね。後は、いじめがきっかけで不登校になったケースもあります。ですが、1年前にいじめられたのをきっかけに不登校になって、それから1年間ゲームしてたら、不登校になっている原因って変わってるじゃないですか。きっかけはいじめだったんだけど、今本当に学校に行ってない原因なのか?って言われると分からないですよね。

再登校まで平均17日、再登校率は驚異の90.6%


ーースダチさんとして、これまでどれくらいの確率で再登校させていたり、何人くらいを支援してきたりしたのかを伺ってもよろしいでしょうか。

小川さん:支援してきた数で言うと624人です。再登校の平均日数が17日で再登校率は90.6%ですね。

ーーすごい、再登校の平均日数17日ってとても早くないですか?

小川さん:そうですね。実は、不登校支援事業をしている会社や自治体でデータを出してるところってほとんどないので比較対象がないのですが、この3年間で624人をサポートしたっていうのは日本でもトップクラスの実績だと自負しています。

ーーそもそも不登校支援で実績を出せるところがすごいですね。なんか聞いたことないというか…。

小川さん:そうなんですよ。「カウンセリング人数〇〇人!」とかはよく聞くのですが、重要なのって、サポートした子どもたちが、その先どうなったのか?じゃないですか。カウンセリング人数を大々的に謳っても、本質的に親御さんが求めてるものとはずれていると思っています。

再登校してから8ヶ月以上継続登校できている人は80%

ーーちなみに、ダイエットで言うところのリバウンドのように、一時的に学校に行けたけどまた不登校になってしまった。そんなケースもあると思います。サポート後のデータもとっていますか?

小川さん:はい。私たちは再登校してから8ヶ月以上継続している人を「継続登校」としているのですが、サポート終了した人たち限定で一度アンケートを取りました。

結果は、継続登校ができていたのはちょうど80%。残りの20%はたまに学校に行けない人たちも含めた数字です。

ーー残りの20%の人たちに対しては何かサポートはしているのですか?

小川さん:もちろんです。再度支援を受けることも可能ですし、コミュニティも運営しています。月額3,000円で親御さん限定のオンラインサロンをやっているのですが、そこに入っていただくのも1つの手です。その中では、どうやったら継続登校できるかといった記事を投稿しているので、それを読んでいただきながら質問回答をしていく。そこで学びながらご家庭でも実践してみてください、といった感じです。

ーーアフターケアもしっかりされているのですね。

小川さん:そうですね。再登校した親のコミュニティっていうのは、日本でおそらく弊社だけだと思います。「うちは大変」、って言うのを苦労話を発散するコミュニティではなく、どうやったら継続登校できるかを発信して、親御さんからの質問回答をし続けているという意味でも、ポジティブにコミュニティは運営できていると思います。

ユーザーと一緒に成長し、将来は子育て領域にも進出

ーー将来の展望についても教えてください。

小川さん:スダチは現在不登校支援事業に特化していますが、将来的には学習支援や子育て領域に進出したいと思っています。その実現のためにも今、不登校支援事業と並行してゲーム型勉強アプリを作っています。

理由としては、再登校した親御さんから1番多い相談が「子どもが勉強しません」なんですよね。不登校だった子ってゲーム好きな子が多いので「ゲームっぽい勉強ならちょっとやってみるか」、みたいに思ってもらえるんじゃないかと考えていて。似たようなサービスは他にもありますが、私たちは単なるゲームのようなアプリではなく塾のようなサービスをやりたいなと思っています。

ーー再登校に成功すると悩みの次元も1個上がるのですね。

小川さん:そうですね。子育て領域については、幼少期の子育てや子供への接し方、子どもが不登校じゃない親に向けてどうやって子供と接すればいいかなど。子育てって正解はないと言われていますが、不正解はいくつかあると思うんです。

例えば、子どもの好きなことをただ好きなだけやらせるのは間違いとか。不登校支援事業で得た知見をしっかりまとめた上で、子育てにおけるさまざまな課題を拾い上げながらユーザーと一緒に成長していけたらいいなと考えています。

ーーとても素敵な展望だと思います。本日はありがとうございました!

(取材:栗林和矢 執筆・編集:asuka)
※記事中の画像は全て小川さんからご提供いただいております。